不要、ノチ必要
キャラメル
私はクッションを抱えて、目の前の女友達にこう言った。
「私は今のこの環境に満足しているの」
「いや、そうは言ってもね……」
彼女は呆れたように私を見る。何とかしてこの人を納得させたい。
「この前だって、小学生のときに習った、卵とゆで卵の見分け方を友達に説明したんだから」
「……え?」
「それに、漫画にあった百年戦争の知識が、世界史で役に立ったのよ!ね、分かったでしょ!」
「だから何だって言うのよ……」
私は渾身のドヤ顔とドヤ声で言い放つ。
「つまり!今まで過ごしてきて得た知識は、将来のどこかで必ず役に立つのよ!捨てるべきものもないし、必要ないこともこの人生で起こらないからね!」
よし、決まった!私の主張に具体例まで添えたし、最後のまとめもバッチリだわ!小学校で習った作文の書き方って強い!
心で自画自賛しながら彼女をチラリとみると、ちょうど溜め息をついたところだった。
「えぇ!何で溜め息ついたの!?」
「あんたの言いたいことは何となく分かったよ……でもね」
彼女はそこで一旦言葉を切ると、部屋全体を見渡し肩をすくめ言った。
「それを部屋が汚い理由にしちゃダメじゃない?」