髭
水上緋月
──あやと、今日もあやりとは一緒に遊ばないの?
──何言ってるんだ。当たり前だろ。女子が混じったら場がしらける。
──あやり、いっしょに遊ぼうよ!
──ちょっと! 男子はどっか行ってくんない? あやりはこの後私たちと遊ぶから。
──ごめんね……、なぎさ。
「おいなぎさ! お前さっきの授業寝てただろ。怒られるかもしれないのに勇気あるなぁ。あ、それはそれとして、今日も公園でサッカーしような」
いつからだろう、あやりとあまり話さなくなったのは。男子と女子の間に大きな壁があると感じるようになったのは。幼稚園や低学年のときはみんなで一緒に遊んでいたのに。
放課後あやと達と公園に行くとそこで何人かの女子がサッカーをしていた。その中にはあやりと、あやりが最近仲良くしてるあの女の子もいた。
「おい! ここで今からサッカーするからどいてくんない? 女子は家でおままごとでもしてたらいいんだよ」
「はぁ? そっちこそ後からきて何言ってんのよ」
公園をどちらが使うかで男子と女子のグループで喧嘩になった。自分はそれを見て、つい柄にもなく口を出してしまった。
「あの、一緒にサッカーするっていうのはどうかな?」
「何言ってるんだなぎさ。女子となんか遊べるわけないだろ」
「その通りよ。だから早く帰ってちょうだい。これ以上ごねるなら先生呼ぶわよ」
「ちっ、仕方ねーな。今日は帰るぞ」
結果は散々。やっぱり、もう男子と女子が一緒に仲良く遊ぶのは無理なのだろうか。
「……ただいま。お母さん」
「おかえり。あれ? なぎさ? 髭生えてきたんじゃないの?」
「えっ……」
平静を装いながらも心の中では動揺していた。慌てて洗面所へ行き鏡に向かう。確かに髭が生えていた。今までのような産毛ではなくしっかりした毛。なぜ、神様は人間を二つに分けたのか。こんな区別必要だったのか。数分後、気がついたら自分は無心に髭を引き抜いていた。
〈お題〉
最近ヒゲが生えてきた