彼女の作品の主題は、「生きる」ことだろう。どの作品にも、真剣に人生に向き合う姿勢―もがき―の美しさが描かれている。気持ちのいいほど溌剌とした人柄を支えているのは、こういう真剣さなのだ、ということを改めて感じる。「生」に根差した作品は、「感じること」を基本に作られている。そこに、私は自然への愛着を感じる。とりわけ、風への愛着は、甚だしいものがありそうだ。
『黄金のオオカミ』
最も彼女が力を入れて書いたものの一つだと思う。
黒和の感情を取り戻すか否か、という葛藤が、この物語のハイライトだろう。大崎たちはしばしば、黒和の感情を取り戻すことが正しいことなのか、迷う。
黒狼が言ったセリフで
「あの子は感じとることに疲れ切っていた。何不自由ない生活の中でも。知らず知らずのうちに我らの生き方に憧れていたのだ。だから玉は返さぬ。それは人の子の願いでもある」
とある。「感じとることに疲れ切る」という気持ちが理解できる守井や、大崎は迷ってしまうのだ。
大崎も守井もそれぞれいろいろな劣等感を持っている。その上で勇気を振り絞って、立ち向かっていく。その姿に、大変強さを感じる。
『足湯倶楽部』
楽しく愉快な作品。
『下手歌葉梨』
自然への愛がにじみ出ている。
『風の唄』
感じることが大切だということに気づく。心の中の葛藤に耳を傾けて、自分に正直になろうとする姿が、躍動感を持って描かれている。「答えはそこにあるのだ」という表現から、やはり考えるというよりも、感じとることの重要性を感じる。
『リンゴあたま』
普通の人が勇気を振り絞るところに、この作品の良さがある。
『山にのせて』
これは『黄金のオオカミ』や『風の唄』に出てくる「風」とリンクさせて読むと面白い。やはり、生きることの強さを感じる。
『LOKKAR』
ここでも、やはり作中の登場人物はそれぞれの困難に立ち向かう。ただ、がむしゃらに頑張るというよりも、青春の中の人が繊細に描かれている。
友菜は最近の義和が元気のないことに気づき、勇気づけたい気持ちになるが、義和は一人で立ち上がる。それを見た後の、友菜の気持ちの変化がいい。
他人のために頑張ろうとするのは簡単だが、自分のために勇気を振り絞ることは難しい。そう思い、ただ他人に期待していた自分を友菜は自分の手で変わろうとする。
『シンデレラ』
澄み切って、迷いのない感情がいい。
『戦歌』
自分という存在の無力さが、激しい希望とともに描かれている。
『君へ』
無力さの認識の上、健気に「変わらないもの」を追い求める姿に心を動かされる。