戦歌

 

傷が広がり

 

血が赤き血が流れ出て

 

真っ白な布に染みをつくる

 

彼はそれをたいそう誇らしく振る

 

 

 

人々は歓声を上げて戦士を見つめ

 

祖国の山々は彼を讃えている

 

その横で私は

 

どうしてペンなど持っていられよう

 

 

 

彼が白刃の下にさらされているときに

 

彼が銃声の響くときに

 

必死に命を燃やしているというのに

 

どうして本など意味をなそう

 

 

 

戦士の正体が

 

たとえあの世からの死神で

 

残酷に人を殺し

 

笑みさえ浮かべる悪魔でも

 

どうして憧れを抱かずにいられよう

 

 

 

だって私は血を流してみたいのだ

 

赤き赤き血を

 

恐れさせてみたいのだ

 

そうして魂の震える瞬間を

 

最期の最期の瞬間を

 

感じてみたいのだ

 

 

 

私はこのまま椅子に座って老いてゆき

 

すべてを忘れ

 

無に還る

 

どうして

 

どうして何一つなそうとしなかったのだろう

もどる