散歩ノ途中、野焼キノ翁ト会ウ
野を焼きて命育む炎かな
野を焼きて芽吹く設けを遣りにけり
けぶり昇る香を残してこそ寂しけれ
灰の野に立ち込めるのは我と靄
潔く虚空無辺に消えにけり
暮レテ間モナイトキ、不気味ニ空ガ薄暗イ
急ぐ帰途建物の影差し迫る
魂アクガレル心持シテ、身フラフラトソレヲ追ウ
朽ちし葉の踏みしだく音耳冴ゆる
山際の薄紅のやさしさよ
早朝、鳥ノ声ニ目ガ覚メ
鳥の声木々に木霊す霧の中
散歩ノ途中、ニコニコノ小学生ニ会ウ、後ヲ見テ
珍客かアヒルとお散歩ランドセル
机ニ向カッテイルト、鳶ノ鳴キ声ガシテ、鉛筆ヲ置キ
物憂さがピーヒョロヒョロのそら昇る
空高くトンビの滑りは夢の夢
志賀直哉ノ随想ニ山鳩ヲ食ウタ話有リ。
ソレ以来普段見テイタツガイノ方方見エズ
山鳩よ鍋にならんかならぬのか
誰モイナイ家カラ何カ聞コエル
嗚呼生きとる家がかすかに軋む音
荘重の竹の前にて襟正す
竹伸びる逞しき息無辺の空
嗚呼のどけ雲雀のつがいかけくらべ